大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)165号 判決 1957年12月20日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人佐々野虎一の上告理由について。

原判決の確定するところによれば、昭和二四年6月10日上告会社木下出張所長越川春吉が上告会社の代理人として、被上告人信田との間に同被上告人の上告会社に対する他の債務を決済せしめる手段として、本件に適用ある無尽業法旧一条にいわゆる「抽籖、入札其ノ他類似ノ方法ニ依」らずして、上告会社と同被上告人との単なる合意をもつて、同被上告人を本件二口の無尽の落札者と定めたというのであるが、かかる落札者の定め方が、同法旧第一条の法意、(ひいては上告会社の無尽契約約款の規定)に反することは原判示のとおりであり、かつ、右二口の無尽について、各所定の入札日にいずれも落札者がなかつたか、或は落札者があつても、前記上告会社と被上告人信田との間に同被上告人を落札者とする合意が成立した昭和二四年6月一〇日までの間に、その権利を失つていた事実は、これを認めるべき証拠のないことは、また、原判決の確定するところであつて、その他、本件において特に右合意により、他の無尽加入者の権利利益を全然害することのなかつたことは、原審において、上告人の立証しないところであるから、右合意をもつて法律上落札の効力を生じないものと判断し、右落札の有効なことを前提とする上告人の本訴請求を排斥した原判決には所論のような違法はないといわなければならない。

所論大審院判例は具体的案件を異にし、本件に適切でない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例